清々しい白の味わいは 環境負荷の少ないブドウづくりから
2007年の初リリース時から、涼やかな味と華やかな香りで道産ワインの注目株となった「クリサワブラン」。
そのブドウをつくるのが、岩見沢市栗沢の丘に広がる「ナカザワヴィンヤード」だ。
園主の中澤一行さんはエンジニアから転じて、2002年にこの農園を開いた。以来ブドウづくりに専念し、栃木県の「ココファーム&ワイナリー」と栽培契約を結び、ゲヴュルツトラミネール、ピノグリ、ケルナー、シルヴァーナ、赤ワイン用のピノノワール、計2.7haを育てている。
~風土に適したワインづくりを求めて~
10月初旬の晴れ渡った日、岩見沢市郊外の丘の斜面にあるブドウ園を訪れた。今日は農家にとって一年で最も嬉しい収穫日。はさみを手に働く人たちの中には、小規模ワイナリーやブドウ農家の主の顔が見える。彼らは、フランスのドメーヌ(ワイン用ブドウ園)を一緒に視察した仲間だ。その時訪れた古い農園では、特に栽培条件に恵まれてはいない畑でも、無農薬栽培がごく当たり前のように行われていた。
そんな体験に影響を受け、開園以来一度も化学合成肥料と除草剤を使わず、刈った草を土に還す循環型農法を基本にしている。土中の微生物や虫たちも元気だが、草も畝の間を埋め尽くしそうな勢いだ。伝統的なボルドー液も通常より減らし、カビを抑える生物農薬(納豆菌)も最小限。「まだ技術が追いつかないのですが、この土地に合わせてできるだけ無理のない栽培法を探っていきたい」と中澤さんは言う。
~畑を丸ごと味わうワイン~
作付の3割を占めるのは、ライチのような香りをもつ古い品種、ゲヴュルツトラミネール。栗沢の土地に適して作りやすい反面、面積当たり収量はケルナーの半分に満たない。こうした事情もあって、できるワインは年4000〜6000本と、目標の1万本には届いていない。「収量のことは常に頭から離れません」と中澤さんは自戒するが、一方でこうした個性的な品種が「ナカザワらしさ」につながっている。
クリサワブランは、白用4品種の収穫全量を品種別に醸し、それらを全量ブレンドして造られる。このやり方だと作柄によってブレンド比率がばらつくが、それでもワインのきれいな酸や上品な味のふくらみには、確かにこの農園の特徴が感じられる。「発売時期は、その年の畑を丸ごと評価されるようでドキドキします。クリサワブランらしい味、と言われるとホッとする」。ワイン専門のブドウ農家として、出来上がったワインの味で期待に応えたい。中澤さんはそう考え、辛抱強く樹と対話を続けている。